【詩】世界の終わりにて

思い出の中を辿るのはよして

世界が終わってしまったんだ 

思い出の中を辿るのはなぜ 

それは、あらゆるものを秘めていた 

 

草叢を掻き分けて、誰よりも早く川に足を浸した 

浅瀬に体を仰向けて、緩やかな流れに身を任せる 

真上に燦然とある真夏の太陽と青空、それは僕だった! 

風景は分断されることなく、すべてが繋がっていた 

  

気付くと友たちの呼ぶ声がする、今は亡き歌声 

僕はまだ自然でいたかったけれど、手足を動かして深水に潜り込む 

川の一番深いところで魚と一緒に泳いだよ、さながらダンスのように 

息苦しくなり水から顔を出すと、岸辺で父が鮎を焼く煙が立ち昇る

 

思い出の中を辿るのはよして 

世界が終わってしまったんだ 

思い出の中を辿るのはなぜ 

それは、あらゆるものを秘めていた

  

僕らはいつだって一緒にお喋りしていたよ、あの娘の瞳に僕が映えて 

叶わなかった初恋は僕に教えた、僕が僕であることを 

自然が遠ざかった日を僕は知らない、悲しむ暇もなかったんだ 

僕は夕暮れのグラウンドで白い球を追っていた、僕を忘れて