【詩】◯の音

遠くインドの広場では、
シタールの風にあわせてタブラ奏者の手が機械へと
その傍では恋人たちが踊り出し、
彼の視線の先には恋焦がれる透明なあの娘の姿が
タンタン、タタタタ、タンタン、タ◯タタ
タタタタ、タタッタ、タタ◯タ、タンタン
◯はタブラ奏者の魔法の打音、
その音で彼は一瞬間、あの娘の姿を見つけたのさ

遠くドイツの演奏会では、
鍵盤を愛撫するピアニストの手が自動操縦にすり替わり
陶酔しきった聴衆は各々の恋人を忘れて、
旋律によって甘い夜の幻夢へと導かれ
ラララララ、◯ララララ、ラッラララ、ラッラララ
ラッラララ、ラッラララ、ララ◯ララ、ラララララ
◯はピアニストの悪戯な魔法、
その音は聴衆の幻夢に忘却の恋人を投影したっけ

遠くアメリカのステージでは、
ロック・スターの歌声が熱気と狂気によってオルガスム
最前列のグルーピーたちは繰り返すホップと、
両手を遠く長く差し向けながら
Cry ◯ Baby, Cry Baby, Cry Baby,
Honey, welcome back home,◯
◯はロック・スターの獰猛な発狂、
その声はグルーピーとの束の間のセックスさ

遠く日本の高層マンションでは、
ラップトップ・コンピュータがエレクトロなノイズを流しっぱなし
ヘッドホンを耳にあてがい正確に音を追う彼、
まるで数学者のような顔つきで
ギギギギ、ギーーー、ピピ◯ピ、ピピピー
ピピピピ、ピッピピ、ギギーー、ピーーー
◯はラップトップ・コンピュータの気まぐれ、
その音は数学者たちへの挑戦のように

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