エッセイ

【エッセー】ジャッキーのこと

昔、横浜の伊勢佐木町に住んでいた頃、皆からジャッキーと呼ばれている中国人の知り合いがいた。その男は眼鏡をかけて頭を綺麗に剃り上げていたからジャッキーというあだ名がジャッキー・チェンに由来するものでないことは確かであった。私は彼の本名も生い…

【エッセー】恋愛感情のこと

一般的に、男は気に入った女性が身近にいるとなんとか手段を尽くして自分に好意を持ってもらおうとする。これが上手くいくと、いわゆる恋人同士ということになるわけだが、人と人との関係というのはそれほど単純ではないから、大抵の場合、男のアプローチは…

【エッセイ】酔っぱらいの朝にて

ブラックニッカの小瓶に直に口をつけて一人ちびちびとやっていたらこんな時間になってしまった。ヘッドフォンを耳にあてて「Led Zeppelin Ⅱ」をオートリピートで聴いていた。ずっと聴いていた。ジミー・ペイジのギターは人をアホにする。あれは麻薬だ。終わ…

【エッセー】広島のこと

広島の夏は暑い。京都のような盆地の暑さではないが、市街地が海に面していないので独特の暑さがあるのだ。高校を中退した後、山陽本線の列車に乗って広島までよく一人で行ったものだ。何をするともなく、ただひたすら広島の街を歩き回った。歩くのに疲れる…

【エッセー】中国人の女

もう随分前の話になるが、その夜、十年来の友人である中国人女性が経営するパブに招かれて、長居し、ウィスキーのボトルを一本空けた。店は恐らく前身のキャバクラを改装したのであろう、煌びやか過ぎず、暗澹過ぎず、日本によくあるタイプの安価なパブとい…

【エッセイ】季節はずれの雪から

三月も下旬を迎えていたその日、とある書類をプリントアウトするため立ち寄ったネットカフェを出ると、季節はずれの雪が舞っていた。思わぬハプニングに私は驚き、咄嗟に空を見上げた。横浜駅西口界隈の賑やかなネオンに映えた白い粉雪は、音を立てず、しか…