2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

【音楽】尾崎豊「卒業」にみる歌声の変遷

早熟さと時間の感覚、27クラブ 早熟な才能というのは、ときに、悲劇的な結末をその人に与えることがある。例えば、若くしてスターダムにのし上がったロック・スターたち。その中の幾人かは、生を駆け抜けながら若さを爆発させた後、全エネルギーを使い果たし…

【音楽】尾崎豊/永遠の胸

印象的なギターソロから始まる尾崎豊の「永遠の胸」は、1990年にリリースされた20代の尾崎豊の集大成ともいえる二枚組アルバム『BIRTH』に収められている楽曲である。7分47秒という楽曲の長さもさることながら、その雄大なメロディーラインと、少しの切実さ…

【音楽】中島みゆき/時刻表

中島みゆきの楽曲群の中に、ひっそりと佇んでいる名曲がある。「時刻表」という曲だ。中島みゆきの歌声もどこか淋しげではあるが、ありふれた人間像を歌いながら、自身もまたありふれた人間のようである歌い手の絶望的な淋しさが木霊するような曲である。サ…

【書評】「飛び降り」「幽霊」――『セックスの哀しみ』より/バリー・ユアグロー

はじめに 超短編の名手、バリー・ユアグローの著書に『セックスの哀しみ』という超短編集がある。セックスに纏わる人間の悲哀を、ときには直截的に、ときには隠喩的に、ユーモラスに描いてみせる、そんな超短編集だ。その本の中に、「飛び降り」と「幽霊」と…

【エッセー】真夜中のプールと青春と自由であること

村上龍の処女作、『限りなく透明に近いブルー』の中に、主人公である僕とリリーがラリった状態で、雷雨の中のトマト畑を這いつくばるシーンがある。二人はラリっているため、トマトを爆弾だと言い張ったり、トマト畑を海と錯覚したりする。このシーンは、ド…