【音楽】尾崎豊「卒業」にみる歌声の変遷
早熟さと時間の感覚、27クラブ
早熟な才能というのは、ときに、悲劇的な結末をその人に与えることがある。例えば、若くしてスターダムにのし上がったロック・スターたち。その中の幾人かは、生を駆け抜けながら若さを爆発させた後、全エネルギーを使い果たしたようにこの世を去っていく。ある人は生への絶望から自死し、ある人は才能の枯渇からアルコールやドラッグに耽溺してしまうことによって。悲劇的な結末、と先述したが、それは若くして逝去したロック・スターたちを端から見ている私の想像であって、彼ら自身は、おそらく、私のような凡人とは時間の感覚がまったく異なっており、彼らなりの生を完うしたに違いない。彼らは生を瞬く間に疾走するが、それは、時間が速く過ぎ行くのではない。逆だ。彼らの時間感覚は間延びしたように遅く、それ故に、彼らは、私からするとその短い生涯の間に、才能を多く発揮させて、様々な偉業を残して去っていく。それはあたかも、宇宙理論における双子の法則のようだ。つまり、光速移動する宇宙船に乗っているのは私たちであり、私たちが暢気に宇宙遊泳を楽しんでいる間に、彼らは地球上において、その短い生涯に才能のすべてを費やす。そして、私たちが意気揚々と地球上に降り立ったとき、もうそこには彼らは存在しておらず、その偉業だけが残されている。少々、大袈裟な喩えだが、若くして逝去していく早熟な才能の持ち主にとって、時間感覚というのはそのようなものではないだろうか。
ブライアン・ジョーンズ、ジム・モリソン、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、カート・コバーン。彼らは誰もが知る夭折した有名なロック・スターたちだが、もちろん、その他にも若くして逝去したロック・スターは数多い。ところで、興味深いのは、彼らの多くが27歳前後で亡くなっていることだ。調べてみると、上述した5人を指して、フォーエバー27クラブ(27クラブ)と呼ばれているらしい。この事実には、医学的、あるいは、科学的な根拠のようなものがあるのだろうか。あるのだとしたら非常に興味深い。